コロナウイルス最新記事!ここをクリック

臨床検査技師の方へ(検査データの読解編)

TAK
TAK
この記事、一度は読んでおくと得すると思います
<前置き>
現在、診察前の採血検査が主流になっており、医師の中にはデータがなければ診察しない人もいるくらいです。また、昔とは異なり、検査技術や精度が高まっているため、医師は検査データを非常に信頼しています。逆に考えれば、われわれ検査技師によって報告された検査データが、万が一誤っている場合、誤診の起こる確率を高めてしまう可能性があるとも言えます。

分析装置が出した検査データをそのまま報告するだけでは、現代の検査技師として通用しなくなりつつあります。いかにして、「検体不良・患者取り間違い・分析装置による誤報告」を未然に防ぐことができるか、われわれが最後の砦であるという責任と認識を持ちながら報告ができるようにしましょう。

検査データを読み解く方法とは

検査データを読み解くには基礎知識はもちろん、努力や経験、そして心がけ次第で大きく飛躍すると思います。この記事では、特に日当直勤務のある皆さんが必ず関わる生化学検査を中心に記載していきます。

内容はそこまで難しいものではなく、若手から中堅どころに該当する方にはちょうど良いものになっていると思いますので、ご自身の仕事に役立てて下さい。

検査データを読み解く鍵は以下の3点です。
①慌てず全体を見る(データ以外にも、コメント・性別・診療科・年齢など
②感じた違和感をそのままにしない(なんか変だなぁ・・・)
③常に疑ってかかる(人間もそうですが機械もミスをします)

生化学検査での基本的な考え方
・増減が比例する項目セット
①AST(GOT)・ALT(GPT)、②ALP・γGTP、③TP・ALB・Ca、④UA・BUN・CRE、⑤T-Bil・C-Bil、⑥Na・Cl
・増減が反比例する項目セット
①Fe・UIBC
*患者さんの病態によってはこの限りではないのでご留意ください。

実践問題による練習および解説

検査データを読み解く練習問題を5つ用意しました。
*実際に体験したものをベースに作成しましたが、個人情報保護のため検査値は変更してありますのでご了解ください。

CASE. 1~4は「初検値でデータ不良を発見して再採血による再検値を報告値としたもの」、CASE. 5は「分析装置によるデータ不良を再測定して報告値としたもの」です。
それぞれの検査データを見て、ご自身でどれくらい対応できるか試してみてください。
(本来であれば血算なども同時に確認するとより分かりやすいのですが、今回は諸事情により割愛します)

<表に記載した文字の意味>
*H:基準範囲を超えている、L:基準範囲を下回っている、U:異常高値、D:異常低値、<>:前回値と大きく異なっている

CASE.1

項目名報告値  初検値 再検値 前回値 
AST32  163H32   
ALT20  40 20   
LD210  2647U210   
ALP362H 305 362H  
γGTP195H 206H195H  
CK107  39L107   
TP7.5  7.3 7.5   
T-Bil0.8  1.4H0.8   
C-Bil0.0  0.0 0.0   
Na139  126D139   
K4.8  16.7U4.8   
Cl101  97L101   
溶血0  36U0   
黄疸3  0 3   
乳び0  0 0   

<CASE. 1 解説>
この問題の特徴は「強溶血検体」であるということ。検体指数は検査機関によって数字化・+いくつ、など表記は様々だと思いますが、基本的な知識に変わりはありません。この場合、必ず頭に浮かべてほしいのはAST,LDH,Kの3項目です。
なぜなら、測定方法や分析装置にかかわらず、血清成分より数倍から数十倍多く含まれる血球成分が採血管内で溶血した場合、間違いなくこのようなデータになるからです(但し、患者さんの体内で既に溶血している場合は解釈が変わるので注意が必要)。
さらに、ナトリウム・カリウムポンプ機能を覚えておくと良いと思います。細胞内外でそれぞれのイオン濃度を調節していますが、これだけカリウムが放出されてしまうと過剰量のナトリウムを取り込んでしまい偽低値となる傾向にあるからです。他にも影響を受けていそうな項目が想定され、かつ前回値がない(初診の患者さん、など)場合、対処としては再採血を依頼するのがベストな選択といえるでしょう。

CASE.2

項目名報告値  初検値 再検値 前回値 
AST25  32>25 20 
ALT13  15 13 11 
LD148  151 148 144 
ALP785H 173<785H834H
TP4.8L 4.8L4.8L4.9L
ALB1.9D 1.9D1.9D2.1L
UA4.6  4.7 4.6 4.4 
UN12  12 12 11 
CRE1.34H 1.36H1.34H1.17H
T-Bil0.8  0.8 0.8 0.6 
C-Bil0.4H 0.5H0.4H0.3H
Ca7.9L -0.9D7.9L8.0L
IP5.0H 5.1H5.0H4.8H
Na134  146H134 135 
K4.8  4.9 4.8 4.7 
Cl101  101 101 102 
CRP18.2H 17.9H18.2H18.0H

<CASE. 2 解説>
この問題の特徴は「EDTA-2Na血混入検体」であるということ。本来、起こってはいけないのですが、不注意や知識不足が原因で発生してしまうことがあります。EDTAの特徴は主に金属イオンの吸着(キレート)と水(血液)に溶けた際のNaやKの流出です。
まず、最も知られているのがCaイオンの吸着作用による影響で偽低値になること、ALPも活性の触媒にMgやZnイオンを用いているため吸着作用による影響で偽低値になることです。ここで注意点!測定方法に酵素法を用いている場合、EDTAより結合力が強いため偽低値とならないことを覚えておきましょう(IPは酵素法のため影響を受けていない)。また、今回は2NaなのでNa値が流出の影響で偽高値(2kの場合はK値が偽高値)になっています。
ここまで読み解ければおおよそ問題ないと思います。対処として、再採血を依頼するのがベストの選択と言えるでしょう。

このCASEは分かりやすく作りましたが、もしCaが測定されていなかったら。。。見抜けましたか!?

CASE.3

項目名報告値  初検値 再検値 前回値 
AST20  12L20 19 
ALT28  20 28 19 
LD198  146 198 207 
ALP165  133 165 151 
γGTP30  24 30 18 
TP6.2  4.9L6.2 6.7 
ALB4.1  3.0L4.1 4.3 
UN18  11 18 19 
CRE0.70  0.54L0.70 0.66 
T-Bil0.8  0.5 0.8 0.9 
C-Bil0.1  0.0 0.1 0.1 
T-Cho196  132 196 199 
TG156  100>156 41 
Na140  134L140 137 
K4.2  7.8U4.2 4.1 
Cl104  93L104 103 

<CASE. 3 解説>
この問題の特徴は「輸液混入検体」であるということ。本来、起こってはいけないのですが、不注意や知識不足が原因で発生してしまうことがあります。輸液とは「患者さんの体液や栄養バランスの管理」を主な目的とした点滴のことを指します。
輸液にはいくつもの種類が存在し一概には言い切れないのですが、糖やカリウム濃度の高いものが多いため検査値の観点からみるとそこが見抜くポイントになります(もし疑わしい場合はオーダーになくても分析装置でグルコースもしくはカリウムを測定すると分かりやすいことが多いです)。また、それ以外の検査値は点滴の混入により血液が希釈され全体的に低値傾向を示すことも大きな特徴となります。
今回は分かりやすく輸液を題材にしましたが、他に生理食塩水や補液の混入などもあり得ますので同時に学んでおくのが良いと思います。ここまで読み解ければ問題ないので、対処として、再採血を依頼するのがベストの選択と言えるでしょう。

CASE.4

項目名報告値  初検値 再検値 前回値 
AST65H 298H65H104H
ALT115H 76H115H113H
LD366H 394H366H398H
ALP300  340 300 213 
γGTP297H 67H297H200H
CK140  23L140   
TP6.6  5.6L6.6 6.0L
ALB4.4  2.1L4.4 3.9 
UA0.9D 6.8 0.9D0.9D
UN9  89H9 9 
CRE0.65  6.06H0.65 0.56L
T-Bil0.6  6.2H0.6 1.2 
C-Bil0.2  4.7H0.2 0.3H
Na139  135 139 142 
K4.3  5.5H4.3 3.9 
Cl105  104 105 110H
CRP2.3H 4.5H2.3H3.4H

<CASE. 4 解説>
この問題の特徴は「患者取り違い検体」であるということ。本来、起こってはいけないのですが、不注意や確認不足が原因で発生してしまうことがあります。患者さんの取り違いを見抜くマニュアル(採血管違いや点滴の混入はある程度マニュアル化できる)は存在しませんので基礎知識に加え読み解く鍵の②③が大になってきます。
今回は肝機能と腎機能に注目してみましょう。前回値と比較してAST上昇・ALT低下・LD横ばいとなっていますが、AST・ALT値が正しいと仮定するとLDはもっと上昇するはずです。また、ALP上昇・γGTP低下・ビリルビン著増となっていますが、ALP・ビリルビン値が正しいと仮定するとγGTPは上昇するはずです。総蛋白とアルブミンも両方低下していますがバランスが合っていません。腎機能の急激な上昇もあり得なくはないですが、もし可能であれば診療録などを参照して確認する必要があります。
ここまで読み解いた上で、さらに確証を得る方法の1つとして、トレイ法で血液型(既に血液型が判明している場合のみ有効)を実施してみても良いかもしれません(患者が違っても確率25%で一致してしまいますが・・)。最終的には担当医に判断を仰ぐことになりますが、再採血を依頼するのがベストの選択と言えるでしょう。

CASE.5

項目名報告値  初検値 再検値 前回値 
AST24  24   22 
ALT28> 28>  18 
LD248H 248H  255H
ALP753H 753H  661H
TP6.9  6.9   6.7 
ALB3.8L 3.8L  3.7L
UA2.7  12.7U2.7 2.4 
UN14  14   13 
CRE0.59  0.59   0.58 
T-Bil0.4  0.4   0.4 
C-Bil0.0  0.0   0.0 
Ca9.7> 9.7>  9.0 
Na141  141   142 
K3.7  3.7   4.1 
Cl105  105   107 

<CASE. 5 解説>
この問題の特徴は「試薬プローブのコンタミネーションによる結果不良検体」あるということ。検査技師側の立場からすると、本来、起こってほしくない事ですが、メンテナンス不足や機器不良が原因で発生してしまうことがあります。
プローブコンタミネーションの場合、ある項目が単独でポコッと上昇するケースが多いように感じます。分析装置の不良だからしょうがない、ではなく読み解く鍵①②③が念頭にあれば誤報告を防ぐことができます。今回は尿酸だけ著増しており、これが真値であればLDも上昇したりクレアチニンが上昇する、など他にも変動があるはずだからです。プローブコンタミネーションかどうかは疑いのある項目を単独測定すれば簡単に判断できますので実施してみてください。

最後に

皆さん、練習問題はどれくらいできましたでしょうか?私が体験した中には、他にも様々な原因によって検査データが変わってしまうことがありました。
検査データは自動化が進み便利になった一方、分析装置に頼り切っている状態はいざという時に何もできない、ということになります。検査データを臨床側へ報告する時は、常に何が起こるか分からないという認識を持って読み解く鍵の3ヶ条を忘れずにいてもらえると記事にした甲斐があります。われわれは患者の取り違えや検体不良を発見できる最後の砦でなくてはならないのです。